JH1YDT 早稲田大学無線通信研究会

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君もできる!部誌の作り方大全【2023年秋部誌記事先行公開】

Hello CQ!今年3月に一線を退いたはずのLVQです。しれっとブログを書かせてもらっています。

 

さて、JH1YDT 早稲田大学無線通信研究会は今年も早稲田大学の学祭に出展します。

そして、3号目となる『Yesterday Develops Tomorrow』2023年秋号を発行します!

今回は昨年にも増して力が入っており、読み応えのある面白い部誌になる予定です。編集長は後輩に引き継いだので、彼が新たな時代を拓いてくれることでしょう!

私も記事を2本寄稿させていただいたのですが、そのうちの1本『君もできる!部誌の作り方大全』をここで先行公開します。

この記事は私が過去2回に部誌の編集長を務めて得た部誌作りのノウハウを書いたものです。これまで後輩や他社団から部誌の作り方を聞かれることが多く、それならばまとめてみよう!と思い執筆しました。7000字近い文量で大変長いのですが、部誌作りに悩む皆さんの助けになればいいなと思っています。

この記事を「面白い!」と思ってくれた方は、ぜひ今年11月4日(土)・5日(日)の学祭で部誌『Yesterday Develops Tomorrow』をゲットしてくださいね!

 

 

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君もできる!部誌の作り方大全

 

 YDTが発行する部誌も今号で3冊目である。今回は後輩に任せたが、創刊から2冊目までに関しては私が編集長を務めていた。0から部誌を作るという作業は大変だったがなかなか楽しく、思い出深いものである。一応ノウハウのようなものも身についたので、後輩たち・そして部誌を作ってみたいと思ってもどうしていいか分からない他社団に向けて、やり方を書いてみようと思う。

 今回想定する文書作成ソフトウェアはMicrosoft Wordである。なお、言うまでもないがここに記すのは自己流かつYDTにおける場合であり、やり方は各々好きなように変えてもらって構わない。

 

1.概要を決める

 部誌を0から作る場合、決めることがたくさんある。まず決めなくてはならないのが部誌のタイトルだ。一度決めるとなかなか変えることはないので、こだわって考えたい。

 次に考えるべきは部誌のテーマだ。なぜ今部誌を発行するのか、どんなテーマを持って作るのか。例えば春に出すなら新入生に向けた内容を入れたほうがいいだろうし、学祭に合わせて出すなら外部の人に活動をアピールできるものがいいだろう。

 また、余裕があれば特集を組むのも面白い。みんなに同じテーマで記事を書いてもらったり、何か大きな伝えたいことがあればそれを中心に持ってくることもできる。記事のテーマを決めることで、書くことが思いつかない人の執筆の助けにもなるだろう。

 このようにして部誌の方針を決めることで、後々の制作で目指すべきところが分かりやすくなる。

 

2.スケジュールを立てる

 部誌を作る上でまず迷うのがスケジュールの立て方だろう。以下にYDTの部誌制作スケジュールを載せるので、参考にしてもらいたい。

 ここでは最短日数で作る場合のスケジュールを書いているため、実際には記事募集告知を半月早めるなどして制作にもう少し余裕を持たせる方がいいだろう。

 また、このスケジュールは全員に共有しておく必要があるが、ここで大事なのは原稿の本当の提出締切=デッドラインを「絶対に伝えないこと」である。部誌を完成させる上で絶対に死守しなくてはいけない日を提出締切として伝えてしまうと、遅れて提出してきた人に対応できない。これは経験則だが、必ず締切に間に合わないという人が現れる。掲載記事がすでにたくさん確保できているのであれば未掲載として切り捨てることもできるが、1本でも多くの記事を載せたいというのが本心だろう。であれば、デッドラインより1週間程度早い日にちを締切として設定し、それでも間に合わなかった人はデッドラインまで待ち、それ以降は諦めるというのが一番円満な解決方法である。もちろんその際は、最初の締切を過ぎるまではデッドラインまで1週間余裕があることを伝えてはならない。もし伝えてしまえば締切は「守らなくていいもの」という空気が生まれてしまい、せっかくの作戦も無に帰すだろう。あくまでも締切は死守せよという厳しさを見せつつ、デッドラインは隠しておくのが賢いやり方である。

 

3.ページの書式を決める

 概要とスケジュールが決まれば早く記事を募集したいと思うかもしれないが、まだそれには早い。ページの書式を決める必要があるのだ。書式とはこの場合、レイアウトと言い換えてもいい。これが統一されていないと、のちのち記事を流し込むときにとても手間取るし、なにより完成したときの見栄えがよくない。しっかり決めておこう。

 以下はYDTの部誌の誌面である。これを参照しつつ、基本的な決めるべきことを紹介しようと思う。厳密には書式と違うものも含んでいるが、このタイミングで決めるべきことなのでここで触れておく。

・用紙サイズ

 まず手にとって読みやすいこと、かつアマチュア無線サークルの部誌だと図版なども多いためそれらがきちんと読めるサイズが求められる。B5やA4くらいにしておくのがいいだろう。YDTの部誌のサイズはB5である。

 

・カラーモード

 表紙・本文をそれぞれモノクロとカラー(CMYK)どちらで印刷するかを決める。基本的にモノクロは安く、カラーは高くなる。自分たちで印刷・製本する際は本文中にモノクロとカラーを混同させることも簡単だが、印刷所に頼む場合は面倒な場合が多い。

 これまでのYDTの部誌では、表紙は印刷所に発注してカラー印刷に、本文は自分たちで輪転機を使いモノクロ印刷していた。

 カラーにはCMYKとRGBの2種類があるが、印刷所に発注する場合はCMYKでデータを作るよう求められることがほとんどである。写真などの画像は元々RGBになっていることが多く、CMYKに変換すると色味がくすむことがある。色にこだわりがある場合は気をつけよう。

 

・フォントサイズ

 記事の読みやすさや掲載できる記事の量に大きく関わってくるのがフォントサイズである。雑誌や本の文字のサイズを参考にして最適なものを決めるといい。その際、本文、記事タイトル、見出し1、見出し2、……とそれぞれで数値を決めておき、部誌全体で統一することが大切だ。これがバラバラだと読みにくいし、一度決めておけば編集のときに無駄に迷うことが減る。Wordなどであればあらかじめスタイルという機能が用意されているので、それを活用するといいだろう。

 これまでのYDTの部誌では、タイトルは24Q、見出しは16Q、本文は13Qとしていた。WordなどではフォントサイズはQではなくポイント表記が一般的だが、Qからポイントへの換算は面倒なので各自にお任せする。

 

・ヘッダー/フッター

 ヘッダー/フッターとはご存じの通り、それぞれページの上部/下部に記事タイトルやページ番号を表示する機能である。記事タイトル表示は各ページにあった方が読者に親切だろう。さらにページ番号については印刷所に発注する際に必須のことが多い上、目次をつけるときや乱丁・落丁を探すときにも役立つ。忘れずにつけるようにしよう。

 

・段組

 悩ましいのが段組である。読者の読みやすさを最優先に、何段で組むか決めるといいだろう。YDTの部誌は横書き2段組としている。これは横文字や数字が文中によく出てくることと、B5に1段組だと1行が長く読みづらいことを考慮してのものである。

 

・画像

 画像を記事に入れるときのサイズ、比率なども決めておきたい。特に比率は記事募集時に指定しておくと後の作業が楽である。それが難しい場合は、画像の横幅だけでも編集時にそろえると統一感が出て綺麗に見える。

 

4.記事を集める

 ここまで決めれば、記事を集めることができる。あとは締切まで待つだけ……と思いたいが、何もせずに待っていたのでは記事の提出率は低くなる。必ず定期的にリマインドをするようにしよう。「締切を忘れてました」なんて言わせないように、1ヶ月前、2週間前、1週間前、3日前、1日前としつこいくらいに告知することをおすすめする。

 提出方法は色々考えられるが、PDFのようにテキストを取り出しにくい形式は避けよう。どんなPCでも開きやすいテキストファイル、Wordファイルなどがいいだろう。また、理系学生を中心にテキストフォーマットとしてマークダウン記法も人気があるが、部誌の原稿に用いる際には注意が必要だ。部誌の編集者は提出された原稿をコピー&ペーストでWordなどに流し込むことになるが、その際にマークダウン記法で使われる「#」や「*」がそのままテキストとして入力されることがある。これらの記号をいちいち文章内から削除するのは非常に面倒だし、ミスの元にもなる。対応ができないのであればマークダウン記法は避けた方が無難だろう。

 また、記事に入れる画像はWordなどに挿入して提出という形ではなく、画像単体で提出してもらうことをおすすめする。元画像があればその後の編集も容易だし、画質もそのままで受け取れるからだ。一般的に印刷物に必要な画像解像度はカラー300〜350dpi、グレースケール600dpiなので気をつけたい。

 忘れがちなのが、筆者紹介とあとがきだ。もしこれらも部誌に入れたいのであれば、合わせてこの段階で集めておこう。

 

5.記事を流し込む

 記事がすべて揃ったら、いよいよ流し込みである。書式が決まっているので迷うことは少ないだろう。ここで記事の順番も決まってしまうため、全体の流れやバランスを考えて適切に配置しよう。最後に目次をつけることを忘れずに。

 流し込み終わったら、全体に目を通して抜け落ちやミスがないか確認しよう。この後に校正をするが、その前に見つけられるミスはなるべくつぶしておきたい。

 注意しておきたいのが、全体のページ数を「4の倍数」にすることだ。本は1枚の紙に4ページが印刷されて作られるからである。印刷所によっては2の倍数としている場合もあるので注意が必要だが、いずれにせよページ数が奇数ではいけない。

6.校正・校閲する

 意外と時間がかかるのが校正・校閲である。校正は誤字脱字等の表記の誤りの修正を、校閲は事実確認等の内容の誤りの修正を指す。これは厳密にやろうとするとかなり大変で、専門知識も必要だ。商業出版と同じレベルを目指す必要はないと思うが、部誌として発行する以上は出来る範囲できっちりと行いたい。

 校正・校閲をする段階になったら、流し込んだデータを一旦PDF出力してメンバーに共有しよう。基本的に校正・校閲はその記事の執筆者以外が行うことが望ましい。書いた本人だと見つけられないミスも、第三者が客観的に読めば見つかることが多いからだ。その際、可能であれば実際にPDFを印刷した方が書き込みができるので作業を進めやすい。そして校正・校閲は1回で終わらせず、担当者を変えて2回以上行うようにしよう。

 校正・校閲のルールについては、ここに記述するには多すぎるので各自で調べてほしい。一つの記事内で統一したい・気をつけたいポイントとしては以下のものが挙げられる。

 

約物(句読点・疑問符・括弧などの記号)のルールの統一

・表記ゆれの統一

・英数字、括弧や記号における半角・全角の統一

・口調の統一

・漢数字、英数字の統一

・時制の統一

・情報、計算式などに間違いがないか

・不快、不適切な表現がないか

7.修正する

 校正・校閲でミスが上がってきたら次は修正作業だ。その際に指摘された箇所はリスト化して管理することをおすすめする。そうしないとどこまで作業したか分からなくなってしまうし、また新たなミスを生むことになる。何ページの何行目がどう間違っていてどう修正するのか、未対応なのか対応済みなのか、しっかり記録しておこう。

 修正する際には編集データをそのまま上書きするのではなく、別名保存してデータを分けてから取り掛かるようにしよう。まれに修正前のデータに戻さなくてはならないということも起こるし、いざというときのバックアップにもなる。

 修正がすべて終わったら、あらためてPDF化しメンバーに共有し、適切に修正されているか確認してもらおう。ここでも校正・校閲ができたら理想的だが、スケジュールと要相談である。

8.表紙を作る

 表紙は部誌の華である。その出来によって手に取られる数も変わってくるため、こだわって作りたいところだ。部誌のタイトルロゴなどは一度作ってしまえば毎回使いまわすこともできるので、賢く作業しよう。

 ビジュアル重視でイラストや写真を使いインパクトのあるものにしてもいいし、雑誌のように特集や記事タイトルを書き入れて興味を引くのもいいだろう。世の中に出版されている本や雑誌などを参考に、より希求力のあるものを作っていきたい。

9.印刷・製本する

 印刷・製本は、自分たちでやるか印刷会社に外注するかで作業内容が大きく変わる。ここではざっくりと紹介したい。

・自分たちでやる場合

 100部程度までであれば自分たちで印刷・製本するのもいいだろう。メリットは値段が安く済むこと、配布日直前まで作業ができることなど、デメリットとしては製本作業が人力なので手間がかかること、印刷品質に限界があることなどが挙げられる。この場合は家庭用プリンター、学校などの施設のプリンター、輪転機などを使うことになる。プリンターは印刷が綺麗だが値段が割高になりがちで、輪転機は印刷品質はプリンターに劣るものの値段を抑えることができる。

 完成した原稿を印刷する際には、PC上で本の形に割り付けてから印刷する方法と、原稿を1ページずつ実際のページサイズで印刷して原本を作り、それを割り付け通りに並べることでページを完成させてコピーする方法がある。割り付けについては、印刷する前に本のミニチュアを紙で作っておくと理解しやすいのでおすすめする。

 以下の図は全8ページの横書き中綴じ冊子を作る場合の割り付けであるが、本の構造はページ数が増えても基本的にこれと同じである。

YDTの部誌のサイズはB5、つまり印刷に使う紙は倍のB4になるが、B4で原本を印刷できるプリンターを持っているメンバーがいなかったため、後者の方法をとった。

 印刷が終わったら部誌の形に組んでホチキス留めをして完成である。ホチキスは中綴じ用の大きなものを使ってもいいが、MAX社が発売している「ホッチくる」という商品が手軽で便利である。一般の文具店で安価に入手でき、綴じ枚数が15枚までであれば使うことができる。

 

・印刷会社に外注する場合

 ある程度まとまった部数を発行する場合は印刷所に外注するという方法もある。メリットは高品質なものができること、製本を自分たちでやらなくていいことなど、デメリットとしては値段が高くなること、入稿する関係で締切が早くなること、印刷データ作成の際に様々なルールを守らなくてはならないことなどが挙げられる。

 この場合まず気をつけなくてはいけないのが納期である。いつまでに入稿すれば確実に間に合うのか、初めに確認しておこう。一般的に納期は「印刷所からの出荷日」を指す。完成した部誌が届く日ではないので注意が必要だ。また、土日が営業日に換算されなかったり、ミスが見つかって差し戻されることもあるので、発行日ギリギリの納期を設定することは避けたい。外注する際は特に余裕を持ったスケジュールを組もう。

 印刷データの作成方法やルールは印刷所によって異なるが、多くの場合PDFで入稿することになるだろう。各印刷所のホームページをよく読み込み、間違いのないように作成したい。

 特に表紙データを紙からはみ出る(縁なし印刷)デザインにした場合、トンボ(トリムマーク)をつけなくてはいけない場合がある。これにはAdobe Illustratorなどの専用ソフトが必要な場合があるので、デザインの段階で気をつけておきたい。

 入稿後、問題がなければあとは届くのを待つだけである。筆者はこの入稿の瞬間が楽しく、1シーズンに1回程度の頻度で印刷物を入稿するようになってしまった。

10.完成・その後

 いよいよ部誌の完成である。おめでとう!

 とはいえ完成してからも油断はできない。乱丁・落丁がないかを確認し、配布日に備えよう。

 部誌を配り切るためには宣伝も重要である。せっかく作ったのに宣伝が不十分で余ってしまったのでは元も子もない。部誌の魅力が伝わるように積極的に宣伝していこう。決して遠慮をしてはいけない。

 学祭などで配布する際には、用意した部数によっては1人1部までなど持ち帰り数制限をつけた方がいい場合もあるだろう。何時に何冊手に取られたかなど記録しておくと、次の部誌制作の際に大いに参考になる。このとき、すべて配り切ってしまうのではなく記録用に何冊か手元に残しておくことも大切である。関わってくれた方々へお礼として献本することも忘れないように。会場に来られなかった人のために、PDFデータをWebに掲載するのもいいだろう。

 こうして部誌が無事に発行できたら、忘れないうちに今回決めた書式などのルールをまとめておこう。次に作る際にまた一から考えるのは大変なので、面倒かもしれないが一度記録に残しておくと未来の編集長(それは後輩かもしれないし、あなたかもしれない)に感謝されるだろう。

 

11.おわりに

 以上が私LVQが得たノウハウのすべてである。ここまで読んだあなたには、部誌をどうやって作ればいいかイメージが湧いていることだろう(そうであってほしい)。部誌を作るということは一見すると高度な技術が必要なのではないかと感じるだろうが、それぞれの工程はそこまで難しいものではない。むしろそれらを最後までやり遂げることが一番の困難となるだろう。道のりは長いが、諦めずに着実に進めれば必ず完成させることができる。

 次の部誌を作るのはあなたである。みんなで協力して、とにかくこのお祭りを楽しむことだ。いいものができるよう健闘を祈っている。